密やかな結晶
著者:小川洋子
おすすめ度:★★★☆☆
きらきらしているもの、つるつるしているもの、ぴかぴかしているもの、ふんわりいいにおいがするもの、さらさらしているもの、世の中にはたくさんの素敵なものがある。それらを所有することができ、記憶の中に存在させることができるということは当たり前のように思えるけれど、大切なことを覚えておくことの大切さを見直せた気がする。
きれいな宝石みたいなタイトルに興味を持って、ブックオフでこの本を買ってみた。(御用達ブックオフ。結構前に買いました)
ある島で、「もの」が少しずつ消滅していくというお話。消滅の日はいつ来るかわからないけど、人々はその日が来ると違和感を覚えて朝を迎える。そして、何が消滅したかわかると、島に流れている川へその「もの」を流し、その「もの」の記憶は人々から消えていってしまうのだ。
その島でも、中には記憶を消せない人たちというのが存在する。しかし、島にとって記憶を消せないというのは不都合であるため、秘密警察に見つかると連れて行かれてしまう。ここの描写は悪いことをしていないのに、という観点からなんだか戦争の時のお話みたいだった。
静かでシリアスな感じのお話だったので、読む人は選ぶかもしれない。物語に引き込まれる感じは村上春樹に似ているなと思った。
・現実逃避したい人
・「博士の愛した数式」以外にも小川さんの小説を読んでみたい人
・軽めのSFを読みたい人
におすすめ。