明け方の若者たち
著者:カツセマサヒコ
おすすめ度:★★★★★
やりたいことと、できることは違うよ。
中学時代にお世話になった先生からのメールを見返していた。
恋愛においても、同じだとおもう。
その人じゃないとだめで、代わりなんていないのに、想ってもいい人と、想える人は違うことがある。
相手がいて、自分がいて、それだけなのに、相手の気持ちも、自分の気持ちさえもわからなくなって、それでも相手を信じるしかなくて、でも頭の中にはいつもつらい現実がちらついている。
始まりは些細なことで、でも多分意図的なもので、しだいにその人じゃないとだめになる。
______彼女はカメラを向けられると、「緊張して鼻が膨らむからイヤだ」といつも顔を隠した。その仕草まで好きだったし、現像した写真を見せれば、なんだかんだ言って嬉しそうにしていたところも好きだった。彼女が喜ぶような奇跡の一枚を撮りたくて、デートに行くときは必ず「写ルンです」を買うようになった。二十七回だけ、彼女は僕の言うことを聞いてくれた。______
本当の恋愛なんてどんなものか分からなくて、そんなものあるのかも分からないけれど、何かあるたびに彼女を思い出してしまうことに、憧れさえ抱いた。こんな、辛くて苦しい恋愛をしてみたい。辛さや苦しさを経験した人しかわからないことって、きっとたくさんある。
どんな風に「できること」をしていくのか、この先もずっと見届けたかった。
終わって欲しくない物語だった。