ざらざらをさわる
著者:三好愛
おすすめ度:★★★★★
今私は悩んでいる。
どう書いたらこの本の良さが伝わるのだろうか。
いつだったか、三宅香帆さんの書評の本で、「私のことが書いてある、と思い、びっくりした」と評されていた本があった。なんの本だったかは忘れたけれど。(忘れたんかい)
私にとって、この「ざらざらをさわる」という本は、「私のことが書いてある」本である。
というか、誰にとっても「これって私じゃん!」と思うようなことが、書いてあると思う。決して一般的なことが書いてあるのではなく、「こういうちょっと変わったことをしてたな」とか、「たしかにこんな風に思ったことあったな」とか。
全く知らない人なのに、どこか通じる部分があると、妙に嬉しくなってしまうのである。
著者はイラストレーターで、この本はエッセイである。挿絵は著者のイラスト。
「逃せない」と題された一編では、ポテトチップスを塩辛さの限界が来るまで食べ、その後飲む飲み物への喜びを高める、という内容が書いてあった。
これと似たようなことで、私がたまにしてしまうことがある。
自分でも変だと思うけれど、本屋さんや洋服屋さんでパッと目に入った「読みたい!」「かわいい!」というものをあえて手に取らず、とりあえず近くのものを見ながらじりじり近づいていく、ということである。でも、意識は手元ではなく向こうの「気になるもの」のほうにある。
なぜこんな面倒くさいことをしてしまうのか。と考えたとき、「貪欲な人に見られたくない」ということが挙げられるかもな、と思った。
なんとなくだけど、読みたい本やかわいい服に向かって我先にと向かっていくと、物欲が強い人みたいに見られるのではないか、と思ってしまうのかもしれない。
この本を読んで、「人っていうものは、一つの行動に対して、意外と色々考えているのかもしれない」と思った。
なんだか、不思議な気持ちになれるエッセイなので、現実に疲れた!いつもと違う感覚を味わいたい!という人におすすめ。