手のひらの音符
著者:藤岡陽子
おすすめ度:★★★★★
本を読んで、久しぶりに涙が出そうになった。
けっこう有名な作品なのに、なんで今まで読まなかったのだろう。
でも、ちょっと大人になった今だからこそ、感動したのかもしれない。
服飾、死、いじめ、友人、離婚、恩師、大切な人、兄弟愛、いろんな話題がぎゅっと詰まっている。
印象的だったのは、主人公の水樹は、家が貧しく、高校卒業後はすぐ働こうと内定も決まっていたが、担任の遠子先生が進学をすすめるところ。うまく言えないことがもどかしいけれど、本当に生徒想いなことが伝わり、こんな先生がいたら生徒はとても幸せだろう。
「自分はこの子に関わる最後の教師かもしれないと思って、いつも心に強く留めながら仕事をしてきた」という遠子先生は、とても素敵だなあとおもう。
水樹は高校で少し浮いてしまっており、買ってもらったばかりの自転車の籠に、ゴミを入れられる、ということもされた。その時、「お前もらやられたの」と、幼馴染の信也がサドルが無くなった自転車を見せる。ふたりは笑いながら帰るが、何十年後かに遠子先生のところを訪れたとき、水樹は言われる。「信也くんに会ったら、ずっとわたしに預けてあるもの取りにきなさいって伝えといて。あの子、自転車のサドル急に預けたと思ったらそのままなのよ」。当時のお話と、「現在」のお話で、ページ的にもラグがあったため、ここでこうくるとは。うるうるしそうだったのをこらえるのに必死だった。
名作な理由がわかる。これは一回は読んで損はないし、最近のイチオシになった。
こんな良い本を、無料で読める図書館に日々感謝である。