となりの脳世界
著者:村田沙耶香
おすすめ度:★★★★★
著者の村田さんが不思議な人だということは、この本を読む前からコンビニ人間などの物語を読んで知っていた。
だけど、このエッセイ集を読んで、本当に不思議な人だったんだなあ、と本物の不思議な人であることを確信した。
スポーツ観戦の時なぜか右側のチームばかり応援していたり、パンツやスカートの試着の際でもフェイスカバーをかぶっていたり。
結局、それらには全て村田さんなりの理由があるのだけれど。
そんな不思議な人との共通点をこのエッセイ集の中で見つけた時、「やっぱり私の他にもこういう風に考える人がいるんだ」と安心するとともに、不思議な人の仲間入りをして嬉しいような、仲間入りをしてしまったという寂しさのような、いろいろ混ざった感情が湧いてきた。
どんな共通点かというと、「親切エレベーター」という題のエッセイの内容である。
通っている病院がビルに入っていて、エレベーターの方へ歩いていると、親切にもエレベーターの「開く」ボタンを押して先に待ってくれている人がいる。ありがとうございますと言ってエレベーターに乗るが、親切な人なので、出る時も「開く」ボタンを押して先にどうぞ、と言ってくれる。
それでは、こちら側は親切にされたにもかかわらず、受付をその人よりも早く済ませることになってしまうではないか、という内容である。
全く同じ経験があるため、わかる!と感動した。
自分でもなぜかわからないが、どうしても気になってしまうことがある、その経験を共有できる人がいることに気がつき、本を読んでいてよかったと思う。人が普段思っていることなんて本当に千差万別だから、同じことを思っていたり、同じものが好きだったりすると余計に気が合うなあ、と感じるのだろう。
本物の不思議な人だということが分かったけれど、共通点もあることが分かったので、今後もエッセイ集を図書館で見つけたら共通点を探して読みたい。